研究成果

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 慣性静電閉じ込め(IEC)核融合中性子源を産業界で様々な用途に利用するには,中性子発生率(単位時間あたりの中性子発生数)をさらに向上する必要があり,そのための技術開発が最も重要な課題です.中性子源装置内では,様々な種類の粒子(電子,イオン,中性粒子)が行き交い,複雑な相互作用をしています.特に核融合反応率に大きく影響するイオンが装置内のどこでどれくらい発生しているかは,装置の最適設計を行う上でとても重要な情報です.私たちの研究室では,ドップラー分光計測とモンテカルロ数値シミュレーションを組み合わせイオン生成率分布を推定する新しい逆解析手法を開発しました.
 IEC装置内で高速に運動する水素原子から放出されるスペクトル線(Hα)は,光のドップラー効果により波長がシフトします(図1).この性質を利用することで,Hα発光水素原子の速度分布を求めることができます.Hα発光水素原子は装置内のイオンや中性粒子の様々な衝突過程を経て生成されるので,これらの素過程を追跡できるモンテカルロ数値シミュレーションの結果(図2)と実験で観測されるHα線のドップラーシフト分布を比較することで,プロトン(H+)や水素分子イオン(H2+)の生成率分布を逆解析することができます(図3).
 我々はこの新しい分析手法を用いて,IEC核融合中性子源内部のイオン生成率分布を求めることに世界で初めて成功しました.この手法による粒子挙動の分析を進め,IEC核融合中性子源の性能向上を目指していきます.

業績一覧(抜粋)

[1] Tomonobu Itagaki, Jun Hasegawa, and Eiki Hotta: “Investigation of Ion Generation Rates in an Inertial Electrostatic Confinement Device by Spectroscopy-based Inverse Analysis”, Plasma and Fusion Research, 15, 1206070; https://doi.org/10.1585/pfr.15.1206070 (2020).
[2] 板垣智信,堀田栄喜,長谷川純,高倉啓,田端真之介,松枝泰志,“直線型慣性静電閉じ込め核融合中性子源における放電特性と中性子出力の陽極形状依存性”,電気学会論文誌A, Vol. 140, No. 9. p.464-472; https://doi.org/10.1541/ieejfms.140.464 (2020).
[3] Yuta Ishikawa, Jun Hasegawa, Kazuhiko Horioka, “Mass separated particle flux from a laser-ablation metal cluster source”, Laser and Particle Beams, 37, 324-331; https://doi.org/10.1017/S0263034619000594 (2019).
[4] J. Hasegawa, H. Wakabayashi, H. Fujii, M. Tsukamoto, K. Horioka, “Control of a Laser-Produced Dense Plasma Flow by a Divergent Magnetic Field”, AIP Conf. Proc. 2011, 030010-1-030010-3; https://doi.org/10.1063/1.5053271 (2018).
[5] K. Takakura, T. Sako, H. Miyadera, K. Yoshioka, Y. Karino, K. Nakayama, T. Sugita, D. Uematsu, K. Okutomo, J. Hasegawa, T. Kohno, E. Hotta, “Neutron Radiography Using Inertial Electrostatic Confinement (IEC) Fusion”, Plasma and Fusion Research, 13, 2406075; https://doi.org/10.1585/pfr.13.2406075 (2018).
[6] R. Chiba, Y. Ishikawa, J. Hasegawa, K. Horioka, "Time evolution of laser-ablation plumes and induced shock waves in low-pressure gas", Physics of Plasma, 24, 063520; https://doi.org/10.1063/1.4986085 (2017).

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