研究内容

レーザーアブレーションを用いたクラスタービーム生成に関する研究

 同じ原子の集合体であるクラスター(ナノ粒子)のイオンをGeV級の高エネルギーまで加速して物質に照射すると,従来の単原子イオン照射とは桁違いの超高エネルギー密度状態を物質中に作ることができるようになり,新しいイオン注入技術や慣性閉じ込め核融合のエネルギードライバーへの応用が期待されます.一方,従来クラスターイオンの加速には静電加速器を用いる必要があり,得られるイオンのエネルギーは核子あたり100keV程度にとどまっており,固体に照射した場合は表面との相互作用を起こすだけにとどまっていました.近年,巨大な質量を持つクラスターイオンでもGeVクラスまで加速可能な誘導加速シンクロトロンの原理が発明され,原理実証がなされました.この新型の加速器にクラスタービームを効率よく供給する技術の開発が望まれています.

 私たちの研究室では,固体のレーザーアブレーションにより発生した蒸気をヘリウムガスにより急冷することで,クラスタービームを効率的に生成・供給する技術の開発を行っています.これまでにシリコンやアルミニウムの蒸気から構成原子数が最大で200程度のクラスター粒子を生成することに成功しています.飛行時間質量分析から得られたクラスター粒子のサイズ分布から,各サイズ(質量)のクラスター粒子がどのようなフラックス波形(時間分布)で供給されるかを世界で初めて明らかにしました.これは加速器にクラスタービームを供給する上で大変重要なデータです.

 クラスタービームを加速器に供給するには,中性のクラスター粒子を電子衝突や光電離によりイオン化する必要がありますが,この電離過程はクラスター分子の解離を伴うため,クラスタービームの供給量が制限される可能性があります.一般にレーザーアブレーションで生成された蒸気は多数のイオンを含んでおり,これらが凝集によりクラスター粒子が成長する過程において再結合により全てが中性化するわけではありません.電荷を持ったまま成長するクラスター粒子が効率的に生成される条件はこれまでほとんど研究されてきませんでした.私たちは,アブレーション型クラスター源から直接供給されるクラスターイオンに注目して研究を行っています.